はしがき

 この国労関係資料は、東京駅前にあった国労会館の地下書庫に保存されていた資料の一部であり、会館の移転をきっかけに国鉄労働組合から経済学部に寄贈されたものである。1997年2月13日、佐口と院生の禹宗 の両名が国労会館を訪問、国労本部の中村儀広氏と協議し資料を選定した結果、主に賃金資料、調査資料、各種会議・集会関係資料を中心に寄贈していただくことになった。資料が経済学部図書館に届いたのは、同年3月末である。

資料の到着を待って目録(リスト)作成、帙作成、マイクロフィルム化の作業を開始した。目録作成にあたっては、国労での元の分類や配列順序を尊重し、禹が全体の調整にあたった。また各種資料内容のリスト化の作業は、禹、寺村恭子、堀部みち子が担当した。なお資料の原本は劣化防止のため、法規集などを除いて、すべて中性紙の帙に入れて保管してある。したがって通常の利用はマイクロフィルムを通して行われることになる。

さて、この国労資料は、大きく分けて国労賃金資料(記号1:1)、国労一般資料(記号1:2)、調査部関係資料(記号1:3)、会議・集会資料(記号1:4)、諸資料(記号1:5)、指示・要求書等(記号1:6)、法規集(記号1:7)、国労資料その他(記号1:8)から成っている。国労賃金資料は主に終戦直後から1960年代後半にいたるまでの国労の賃金関係資料から成っている。国労一般資料には50年代までの国労の各種の政策や活動に関する多様な資料が含まれ、調査部関係資料は主に50年代後半と「マル生」期前後の調査部活動に関連した資料から成っている。会議・集会資料は、50年代後半から80年代にいたるまでの調査部長会議、活動家集会、賃対部長会議、交渉部長会議、業務部長会議等の諸記録から成っている。諸資料は主に国鉄労働者に対する意識調査、生活調査から成っており、指示・要求書等は60年代後半から80年代半ばまでの「国労報」、「業務関係報」を網羅している。法規集は国鉄の人事関係法令集と就業規則から成っている。なお国労資料その他は禹が個人的に収集したものを今回この資料に編入させてもらったもので、職階給関係、職制関係等の資料などが含まれている。

これらの資料の価値については様々な評価が可能だろうが、例えば賃金関係資料は、国鉄労働者の詳しい賃金実態を時系列的にとらえることを可能にしてくれる。また会議・集会資料からは、国労の諸政策の形成過程のみならず、賃金制度や人事制度などについての国鉄労働者の考え方を探る上でも貴重な情報を得ることができるだろう。

貴重な資料を寄贈してくださった国労本部のご厚意、資料整理に尽力いただいた関係各位の熱意に感謝するとともに、それらに報いるためにもこの資料がより多くの研究者や関係者の皆さんに利用されることを期待してやまない。

 

         1998年9月          東京大学大学院経済学研究科

                               教授  佐口和郎